93 おこりぼとけ

93 おこりぼとけ

 芋窪の中山宇平さんの庭の奥に「おこりぼとけ」と呼ばれる五基の石塔が祀られています。
 石が欠けていて文字もすっかりすりへっているため読みにくいが、鎌倉時代のものではないかと言われています。五基のうち、二基は五輪の塔、二基は如意輪観音(にょいりんかんのん)、一基はお地蔵さんです。

 この五基の石塔は、前は山口貯水池に沈んだ勝楽寺(しょうらくじ)村中笠部落の中山さんの家の前の二メートル程下の桑畑の中央にありましたが、耕作の邪魔になるので畑の片隅にかたづけたところ、「おこり」にかかってしまいました。マラリアのように高い熱が続く病気のことです。人びとはこの石塔のたたりだと思い、あわてて元にもどしたという言い伝えがありました。

 この五基の石塔がいつどうして勝楽寺村に祀られたものか、理由も時代もわかりませんがこの事件以来人びとはこの石塔を「おこりぼとけ」と呼ぶようになりました。

 「さわらぬ神にたたりなし」と近寄る人も少く桑と篠が生い繁った中にあったそうです。

 勝楽寺村から芋窪に移転する時に、この五基の石塔も一緒に中山さんの庭の奥に移し安置されたものです。
 今でも子供たちがいたずらをすると「おりぼとけの罰(ばち)があたるよ」と叱られるとのことです。
(p202~203)